■ 常染色体劣性遺伝の特徴

  • 原因遺伝子が常染色体に存在する
  • 発症個体を生んだ両親の表現型は正常 であるが、両親ともにキャリアである
  • 発症個体は世代をスキップして存在する(発症個体は各世代に存在しない)
  • オスとメスは同等に罹患する
  • 発症していない個体は遺伝子型が正常な場合と、キャリア(ヘテロ接合体)の場合がある



■ 常染色体劣性遺伝の分離比
A:正常遺伝子  a:変異遺伝子

  □ キャリア(ヘテロ接合体)同士を交配した場合

 
  • AA:Aa:aa=1:2:1
  • 25%の子が発症
  • 75%の子が正常   
  • 50%の子がキャリア



  □ 優性ホモとキャリアを交配した場合
 
  • AA:Aa=1:1
  • 100%の子が正常
  • 50%の子が正常な遺伝子型
  • 50%の子がキャリア



  □ 発症個体(劣性ホモ)と優性ホモを交配した場合

 
  • 100%の子がキャリア


  □ キャリアと発症個体(劣性ホモ)を交配した場合

 
  • Aa:aa=1:1  
  • 50%の子がキャリア(非発症)
  • 50%の子が発症(劣性ホモ)


■ 遺伝子頻度

  • ある遺伝子が集団の中にどれくらい存在しているか、ということを表す。遺伝子Aの頻度をp、対立遺伝子aの頻度をqとしたとき、p+q=1となる。
  • この時、遺伝子型AA、Aa、aaの頻度は、 AA=p2Aa=2pqaa=q2  という関係が成り立つ。
  • ある常染色体劣性遺伝の発生率が1%の遺伝性疾患は、 aa=q2= 0.01→q=0.1、p=0.9。従って、AA=0.81、Aa=0.18
  • 発生率が1%の常染色体劣性の遺伝性疾患は、優性ホモ個体が81%、キャリアが18%となる。
  • このように集団内の疾患の発生率から、優性ホモ個体の頻度、キャリアの頻度を推定することが可能である。



■ 常染色体劣性遺伝による遺伝病を回避・淘汰するために

 

 
  • 希釈の法則(Dilution rule)
  • 両親のいずれかに優性ホモを用いる
  • 他方は表現型が正常であればよい(キャリアでも差し支えない)。発症個体であっても繁殖可能であれば、それでも構わない。表現型が正常な個体の遺伝子型はAA、あるいはAaのいずれかである。左図のように、交配相手が優性ホモ(AA)であれば子が発症することはない。キャリアの可能性は50%であるが、必ず優性ホモと表現型が正常の個体(非発症個体)との交配を続けることで、キャリアの出現頻度は各世代で50%ずつ減少することになる。変異遺伝子は世代を経る度に50%ずつ減り続けて、最終的には淘汰される。常染色体劣性遺伝で重要なことは、優性ホモ個体の同定であるといえる。
  • 基本的にはキャリアを交配に用いることは避けたほうが無難である。
  • 遺伝子診断が可能な疾患については、それを利用して優性ホモ個体を確定できる。
  • 遺伝子診断ができない疾患については、家系図を分析する。
キャリアリスクの変化の例 
  • 左図の例では、発症個体●を生んだ両親はキャリア確定である。
  • ○□は非発症個体を示す。
  • ●の同腹子のキャリアリスクは2/3(66.7%)である。
  • 交配相手に優性ホモを用いると、分離比が50%であるので、子のキャリアリスクは66.7X50%=33.3%となる。
  • 同じように優性ホモと交配すると、分離比が50%なので、子のキャリアリスクは33.3%X50%=16.7%となる。
  • このように交配相手に優性ホモ個体を用いることで、発症の可能性は「ゼロ」になり、キャリアリスクは世代を経る度に、50%ずつ減少していくことになる。



■ ラインブリードの注意点

 
  • 左図は、親族の近親度を示す図である。3世代前までの曽祖父母、叔父・叔母、従兄弟までの近親度を示してある。
  • 個体Aを基準とした時、どれくらいのDNAが共通しているかを数字で示したものである。親兄弟とは1/2、祖父母・叔父・叔母とは1/4、共通、曽祖父母・従兄弟とは1/8のDNAが共通している。
  • 個体Aが、ある常染色体劣性形質の遺伝性疾患のキャリアであると仮定した場合、それぞれの親族と交配した時の発病の危険率は以下のように計算することができる。

    • 近親交配(親・兄弟)と交配した時
            1/2X1/4= 1/8(12.5%)
    • 祖父母・叔父・叔母と交配した時
            1/4X1/4= 1/16(6.25%)   
    • 曽祖父母・従兄弟と交配した時
            1/8X1/4=1/32(3.125%)
  • 上記の確率を見れば、ラインブリードから発症個体が生まれる可能性があることが分かる。4世代の間隔があったとしても、発症個体が生まれる確率は1.56%である。
  • ラインブリードを行う場合は、家系図を十分に検討する必要がある。
  • 遺伝子診断が可能な疾患については、それを利用しても良い。
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